朝海陽子

Chords

2012 6.6 - 2012 7.14

無人島プロダクションでは、朝海陽子展「Chords」を 開催いたします。

昨年、国際芸術センター青森(ACAC)にて開催された「『再考現学/Re-Modernologio』Phase2: 観察術と記譜法」のために、朝海は青森に滞在し、新シリーズ「passage」を発表しました。

「passage」シリーズは、「風を追いかけ」「風を待ち」、青森県内各地を車でまわって8方位の風向風速を示した電光掲示板を撮影した写真8点と、風景の中にポツンと後ろ姿だけ写された人物写真のシリーズで、会場ではNHK 第二ラジオ放送 の気象通報がリアルタイムに流れ展示の一部に「音」が組み込まれました。

同時期に開催した昨秋NADiff a/p/a/r/t での個展「Northerly Wind」では、同じく風や気候をテーマとしながら、今度は写真とともに、風や天気について語られている小説の冒頭文を集めて時系列順に展示し、小説と写真の中の 風景をゆるやかにリンクさせ、現実と物語の間を観客が行き来する仕組みを提示しました。

本展ではこのシリーズをさらに発展させます。青森で発表した「風」の8連作に加え、「会話」を題材とした、 言葉をめぐる物語を鑑賞者がひもといていく新作の組作品「dialogue」、そして朝海が青森で出会った風景とこれまでさま ざまな旅先で撮影したランドスケープ写真を、「移動」をテーマにスライドショーにしてピアノの調律音とともに上映する作品「tuning(調律)」を発表します。現実世界に突如、別の世界が立ち現れる小説の冒頭文のような、ストーリー性の高い「dialogue」を導入部に、「風」「tuning」のランドスケープシリーズをあわせて鑑賞することで、3つの異なる要素から広がる物語、「Chords(和音)」を感じてもらう試みです。

これまでの朝海作品の中で、映画をみている人たちを撮影した「sight」シリーズや研究者たちが研究に没頭している姿をとらえた「Conversations」シリーズでは、「見る者と見られる者の関係性」が提示されてきましたが、本展は、小説や映画のように、朝海が作った物語に鑑賞者を誘い別の世界に引き込む仕組みとなっています。
是非本展をご覧いただきたく、どうぞよろしくお願いいたします。