FLOW(沖つ国/不老山)
FLOW(沖つ国/不老山)
FLOW(沖つ国/不老山) (2022)
版木、ジェッソ、木版画(和紙、油性インク)、木製パネル
182×183×3.3㎝ 左(版木)182×91.5×3.3㎝ 右(版画)182×91.5×3.3㎝

かつて伊達政宗公が『絶勝の地びとをして老いざらしむに足る』と賞賛したという奥松島・野蒜にある不老山は、現在はコンクリートの防潮堤が食い込み美観を失ったかのように見えます。新しいこの構造物を、住民の生命を守る境界線として見立ててみると、海の彼方にある常世と現世を往来する神の船が登場する歌『沖つ国 領(うしは)く君が塗屋形 黄塗の屋形 神の門渡る』(万葉集3888番)が想起されます。生と死の境界線=防潮堤に鎮座する不老山はまるで領く君主が造った門のように見え、また野蒜築港の夢の跡となった運河の水門の残像とも重なります。