八木良太

side:a timer

2006 8.25 - 2006 9.16

このたび「無人島プロダクション」におきまして、8月25日より2回に分けて約二ヶ月間、京都在住の若手作家八木良太の個展を開催いたします。
 第1弾展「sideA:timer」ではこれまで八木が制作してきた作品を中心に、第2弾展「sideB:waltz」では新作を発表いたします。

 八木は、どこにでもあるモチーフや素材を使いながら、観た後で個人の体験や物語を自分の胸のうちで再構成できるような作品を多く制作しています。
 第一弾展「SideA」の展示構成のメインとなるのは。
1)「VINYL」(写真左2点):この作品は、レコード盤の溝をシリコンで型どり、水を流し凍らせプレイヤーで聞く氷の作品です。時間が経つにつれ不条理にも音楽が消えていくこの作品は、レコードに刻まれた音が空中に昇華していくさまと、時間とともに氷が溶けて空中に蒸発していくさまを見事に融和させており、観る者に心地よい時間の流れを感じさせてくれます(勿論涼しさも!)。本展ではこの作品を映像ではなく、実際に展示して会場で氷から流れる音楽を堪能していただきます(演奏は毎日1:00pm、3:00pm、5:00pm、7:00pmに演奏を開始します)。
2)「雨の日の音楽」(写真左下)は、傘の屋根も骨もない、柄だけの部分にMP3を内蔵させ、持ち手の先につながれたヘッドフォンから雨音を聴く作品です。この一見滑稽なオブジェは、実は傍目からは決してわからない本人だけの雨の世界にひたることのできる、とても私的で詩的な作品です。
 「SideA」では他に、カセットレコーダーに入ったカセットテープを手回して聞く作品や、壁に掛けられたレコードの溝に鉛筆やつまようじ、釘などの日用品を置いて聞く作品などを展示し、視覚や触覚体験も伴う「音」の作品群を一挙公開します。

 そして第二弾となる「SideB」展では、太陽電池やタイマーを使った作品や、空き缶で作られたオルゴール、レコードプレイヤーを使った陶芸作品などを展示する予定です。

 100人が体験したことで100通りの物語ができるように、私たちはこの「無人島プロダクション」という場所で一人でも多くの方に、自身の物語をこの八木の作品で追体験していただきたいと考えます。また本展は、普段美術館などで「静かに」「手を触れず」に鑑賞しなければならないという鑑賞方法を無視して、観客の皆様に直に触れて楽しめる展覧会となっております。
 この、八木のAB両面合わせて鑑賞する「初個展」をどうぞよろしくお願い申し上げます。