西村健太

SUBLIMATE

2014 6.14 - 2014 7.5

無人島プロダクションでは、西村健太個展「SUBLIMATE」を開催いたします。

西村健太は、Chim↑Pomのリーダー卯城竜太が講師をつとめる「美学校」のクラス「天才ハイスクール!!!!」の一員として、「TRANS ARTS TOKYO」(2012、2013、旧東京電機大学11号館)や「YAMAMOTO GENDAI Future Feature vol. 6|天才ハイスクール!!!!」(2013、山本現代)といった展覧会への参加をはじめ、精力的に制作・発表を行ってきました。 自身の個展は2回目、無人島プロダクションでは本展が初個展となります。

本展のテーマは「風化」と「昇華(SUBLIMATE)」です。

西村はこれまで、入浴剤、カーペットクリーナーのような、消費とともに消えゆく儚い素材を用いて制作した彫刻作品などを発表してきましたが、本展では、アメリカのモニュメント・バレーをかたどり、ゼリー状の芳香剤で作られた立体作品「モニュメント」を中心とした展示を行います。

コロラド高原に位置するモニュメント・バレーは、浸食された岩山が点在し、まさに「風化」そのものを表象しているかのようなエリアです。
「モニュメント」は、地表の岩石などが次第に削られていく自然現象の再表現であると同時に、事件や災害などの大きな出来事に対してさえ、人々が抱く意識や関心、記憶などが経年によって薄れていく「風化」の意が込められています。けれども、ただ薄れ消えていくだけでなく、覆い隠していたものが取り除かれることで、思いもよらない姿があらわになることもあることでしょう。過去の記憶を脱ぎ捨てた先には、復活/復興による新たな発見や創造があるだろうという作家の希望もまた、この作品には秘められています。

芳香剤で作られた「モニュメント」は、固有の形をもっていると思えた物体が、昇華現象によって、人工的な香りを放ちながら気化していき、嗅覚への刺激が鑑賞者それぞれの記憶や感情をよびさましながら、会期中も時々刻々と変形していきます。
風化していくモニュメント・バレーと昇華していく「モニュメント」の対比が、絶え間ない時間の経過、そして変わりゆく人々の記憶への意識も鑑賞者にうながすことでしょう。

さらに、本展は、決して自ら記入することができない「出生届」と「死亡届」をモチーフに、西村自身の血液で印刷したシルクスクリーン作品「アニバーサリー」、そして、風化と堆積という時間の流れや、目に見えない放射線や心臓の動きを可視化した映像作品などから構成されます。

展覧会場で時間の流れを感じたとき、鑑賞者は、無意識に西村の作品のテーマに同期し、自身の記憶や関心のうつろいを体験することとなるはずです。そして、作家のコントロールの届かないところで、事後的に、これらの作品が私たちの心に何を語りかけ、心の中に何を生み出すのか、ぜひこの会場で検証していただきたいと思います。

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頂上から声がする。
ここには忘れられた大きな山がある。
みんな知っている。

想い出にならない日々を積み重ねること。に、必死になり、
危険な道を避け、目を背けていることも、耳を塞いでいることも、
山の存在も、忘れられてしまっている。

シェアされた保留と誤魔化しと忘失のグラデーションによって、麓はなだらかになり、
山肌はそぎ落とされ、それは歪な記念碑へと姿を変えた。

それでも決して消えることは無い。
頂上から声がする。
道はそこから下りになる。

2014 西村健太

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■ 西村健太
1988年生まれ。埼玉県在住。
2010年東京デザイナー学院卒業後、2011年美学校入学。
近年参加した主なグループ展は、TRANS ARTS TOKYO(2012、2013、旧東京電機大学11号館、東京)、 YAMAMOTO GENDAI Future Feature Vol. 06 「天才ハイスクール!!!!」(2013、山本現代、東京)、 「限界とかねーし Limiter cutしてるし」(2013、HIGURE15-12cas、東京)など。初個展は「Re」(2012、ナオナカムラ、東京)。