改名のお知らせ
この度Chim↑Pomは、2022年4月27日をもちまして、Chim↑Pom from Smappa!Groupへと改名致します。当面はこの名称で活動いたしますので、皆さまにはご周知頂き、今後ともご愛顧賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
ことの経緯は、森美術館で開催中の「ハッピースプリング」展での設営費などを賄うために美術館から協力要請を受け、一部作家側で集めることとなった約1000万円の協賛金に端を発しております。私どもからいくつかの企業にお声がけさせて頂いたうち、Smappa!Groupからのお申し出だけが美術館からお断りされました。
互いに話し合い解決策を模索して参りましたが、先方は「六本木ヒルズという『まちづくり』における『ブランディング』」だと理由を説明し、「森美術館はヒルズという『文化都市』の顔である」と、接客を伴う水商売の会社のロゴは掲載しないと今月改めて回答がありました。
私どもはこれまで、Smappa!Groupとの協働において、「LOVE IS OVER」や、スクラップアンドビルドプロジェクト「また明日も観てくれるかな?」展、そして「にんげんレストラン」など、代表的なプロジェクトを生み出して参りました。
Chim↑Pomの個展は主催するがSmappa!Groupの協賛はNGとする。これを、アートによる「多様性」と取るか「『多様性』の搾取」と取るかは、議論が必要かと存じます。
今後、Chim↑Pomとのお付き合いを望まれる全ての団体におかれましては、私どもが際どい社会人であることを改めてお見知りおき頂き、間違ってもただの「健全」なグループだと勘違いなされませんよう、深くお願い申し上げます。
改名に際し、森美術館には「ハッピースプリング」展において以下2点をご対応頂きたいと願う所存です。
ただし、ゴールデンウィークは美術館の担当各所にも充分にお休み頂きたいので、期日は5月15日までとさせて頂きます。
1. Chim↑Pom from Smappa!Groupを正式名称として、全ての媒体や広報物において使用を徹底して頂くこと
2. 引き続き、Smappa!Groupの協賛金受け取りとロゴの掲載をご検討頂くこと
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Smappa!Groupは新宿歌舞伎町で18年の歴史を持つ、ホストクラブやギャラリー兼バー「デカメロン」、歌舞伎町初の書店であった旧「歌舞伎町ブックセンター」の他、飲食店や介護施設、美容室などを手掛ける企業です。
皆さまご存じの通り、エリイの夫、手塚マキが会長を務め、「ホストとして、社会人として」生きることをモットーに、街のゴミ拾いや地元の祭りや行事などに積極的に参加し、手塚自身も歌舞伎町商店街振興組合の常任理事として街の治安向上に努めています。コロナ禍で歌舞伎町が「夜の街」と名指しされた際には、吉住健一新宿区長とともにコロナ対策の前線で指揮を取りました。
法的な見地はさておき、森美術館の対応を職業差別だと見る向きもあります。特にSmappa!Groupはこのような風潮と向き合い続けてきた会社です。
手塚は朝日新聞(2022/3/5)のインタビューにて、「結局、同業の多くが隠れるために、別会社をつくる。私はそれをしません。堂々と胸を張れる企業でいたいと思うからです。」と語り、その為に業界の悪習と、自らの意思でホストクラブに来る殆どの女性客を受動的な被害者のように見なす世間の目の両方に異を呈しています。
Chim↑Pomとしてはこの件を、クリエイティブ産業が街から「猥雑」なものを十把一絡げに職種や属性により排除する「旧来のジェントリフィケーション」の典型だとも捉えております。
ジェントリフィケーションにも善し悪しの議論があるのは承知の上ですが、その動きをリードした「クリエイティブ都市論」自体の見直しが議論される昨今、時代の変化に美術館が適応するのは当然のことと考えております。
社会全体が、その多様性を謳う(特に森美術館はそのような趣旨をアナウンスしていると思いますが)一方で、実態としては公共性よりもブランディングを優先し、いざ自身の問題として直面すると排除する、という常套手段がまかり通ることに対しての違和感をここに強く示す所存で御座います。
もちろん、いわゆる武器商人のような会社との関わりは私どもも業種からして有り得ませんが、基本的にChim↑Pomは、お付き合いの判断は属性如何よりも其々の会社や個人として考えて参りました。
森美術館もその例外では御座いません。
私どもは六本木ヒルズとともに生き、同時に夜の街とも生きるという公共性にこそ、アートのダイナミズムがあると信じております。
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美術館のスタッフが、これらの対策はじめ、インスタレーションの実現や「道」の運営のサポートに、全力で取り組もうと努力下さったことには、先んじて感謝の意を表したいと思っております。
ただ、私どもは、今回のSmappa!Groupの件と、スーパーラットの館内での展示不可は根は同様のケースだと考えております。
彼ら彼女らが、会社と掛け合い続けてきた経緯を間近に見て参りましたので、ことを荒立てるつもりは御座いませんでした。それでも、スーパーラットが美術館から共同プロジェクトスペースに出されたことで、「表現の自由」に議論の余地が大きく生まれてしまったこと、また上述のSmappa!Groupの件と排除が続いた事の重大さを鑑みて、水面下での交渉に限界を感じた次第です。
つきましては、「ハッピースプリング」展をより面白く意義あるものに発展させる展覧会「Chim↑Pom from Smappa!Group」を、4月27日より「ANOMALY」で開催致します。
起きてしまったことは問題だと考えておりますが、せっかくならばこれを新たなプロジェクトを制作する為の森美術館の思わぬキュレーションだと思い、緊急では御座いますが新作を皆様に披露させて頂きます。
また、同時開催として、4月30日からは「無人島プロダクション」でも一風変わった回顧展「いつのことだか思い出してごらん」を開催致します。
皆様におかれましては、新緑の候、ゴールデンウィークなどをお楽しみのついでにどうぞお足をお運び頂き、Chim↑Pomの一旦の最後と、Chim↑Pom from Smappa!Groupのはじまりをご高覧頂けますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。
2022年 Chim↑Pom from Smappa!Group
改名 (2022)