展示風景
展示風景 "1/12 Don't Follow the Wind" Photo by Kenji Morita, courtesy of Don't Follow the Wind Committee
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展示風景 "1/12 Don't Follow the Wind" Photo by Kenji Morita, courtesy of Don't Follow the Wind Committee
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展示風景 "1/12 Don't Follow the Wind" Photo by Kenji Morita, courtesy of Don't Follow the Wind Committee
Home Drama (2015 - 2022)

27分52秒

本作は、福島第一原発周辺の帰還困難区域内で行われている展覧会「Don’t Follow the Wind」の一環として発表された作品です。

《Home Drama》の原型となる《Home》(2015年)は、かつてこの場所に住んでいた一人の住民との協働により制作されたサウンド作品です。作家はその人物に、「将来、この家に帰ってきたと想定して、その時の場面を想像して演じてほしい」と依頼しました。完成した音声は、崩れかけた家の中で3分30秒間流れる形で発表され、鑑賞者は「未来を想像する行為」を通じて、喪失と記憶、そして希望について静かに考える時間を与えられました。しかし、この家は東京オリンピックを前に取り壊され、作品を体験することは叶わなくなりました。

2022年、小泉はこの音声ファイルを再構成し、30分の新たなサウンドワーク《Home Drama》として蘇らせます。鑑賞者は、かつて家があった場所の「門」からMP3プレイヤーを再生し、地図を手に「最終目的地」まで町の中を歩くよう指示されます。音声は3分30秒のループで構成されており、繰り返される言葉と音は変わってしまった風景の中に、かつての記憶や時間の断片を呼び起こします。

《Home Drama》は、時間・記憶・場所の複雑な関係性を探りながら、災害以後の社会と人間の感情のあり方に向き合う作品です。存在しない家、語られ続ける未来、そして歩きながら聴くことで立ち現れるドラマは、鑑賞者の身体と想像力を通じて再び「家」を形づくります。