作品詳細
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第一次幻惑大戦 (2017)
木版画(パネル、和紙、油性インク)
182.5 x 362 cm

光と炎の文明の利器を操る近代的合理社会と、不明の魔物の存在する冷たい暗闇の非合理的世界の対立を描いた戦争画です 。
絵の右側には妖術使い児雷也(江戸時代の小説に登場する架空のヒーロー)が、手下のガマが噴出する冷気「サボりガス」でサラリーマン達を幻惑で攻撃し、対するサラリーマン達は電卓、年金手帳、銀行通帳を盾にして防御しています。右側で は勤勉なサラリーマン予備軍の中学生達が時間割の上で待機し、放課後の屋上では投光器を使って闇の誘惑を撃退しようと試みているのです。
この作品の背景(バックストーリー)には、学校生活に馴染めず家に引きこもり、読書や空想で毎日を過ごした中学時代に抱いた私自身の夢、「ボードレールのような高等遊民にな りたい」という奇妙な願望(これを俗に中2病と呼ぶ)が反映されてます。「ボードレールのように」不健康に不道徳に働かず、美と芸術に生きるという退廃的な理想は、「健康と勤勉」といった日本の教育理念への反逆であり「お天道様に背を 向ける」ライトサイドからダークサイドへの転落ともいえます。社会の仕組みから逸脱して幻想の世界で暮らす。そんなことは所詮無理だと諦めた大人の理性の下で、思春期に勃発した一次的な葛藤は今だ潜伏し、闘争し続けるのです。それは、 第一次世界大戦下で開発された塗装方法「ダズル迷彩」に科学的な効果と芸術家 のエゴが混在しているかのような、光の白と闇の黒とが綾なすストライプに似た葛藤なのです。( 2017 年 風間サチコ)

横浜美術館蔵