ローレライ (2019)
木版画(パネル、和紙、油性インク)、アルミフレーム
130 x 91.5 cm

川底に沈んだ建物は、黒部水系最初の本格的発電所であった柳河原発電所の猫又取水口 である。魚が遡上するには大変そうな魚道は優美なカーブを描くが、それを余所目に山 女達は水中を自由に泳ぐ。画面中央には、劇中に登場するラインの乙女のモデルと言われているライン川の妖精ローレライが現れ、水難を招く伝説と同様に、水没と土砂崩れの受難を予兆している。実際、この取水口があった猫又谷は、平成7年に記録的な集中豪雨に見舞われた際、最も甚大な被害を受けた地域でもあった。また、黒部川猫又付近の東鐘釣山とライン川流域のローレライの山の形 が似ていることにも注目されたい。