Cubic Cube (2012)
アクリル、油性インク
500 × 500 × 500 mm (Cube), 460 × 760 × 1200 mm (Structure)
アクリル、油性インク
500 × 500 × 500 mm (Cube), 460 × 760 × 1200 mm (Structure)
ヴェルナー・ヘルツォーク監督のドキュメンタリー映画「世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶」を見て以来、3Dが面白いと思うようになった。昨今の3D表現の方式からすると古くさいかもしれないが、アナグリフという方式を用いると簡単に一枚の絵に奥行きを持たせることができる。アナグリフとは誰もが一度は目にしたことがあるであろう、赤と青のメガネを使った3Dの表現技法のひとつである。
ものを見ているときには、それぞれの目に映る像に微妙なズレ(視差)が生じているのだが、それを普段意識することはないし、意識してもひとつのものが2つに見えたりはしない。その2つの像の微妙なズレを計算して、私たちの脳は物体の奥行きをかなり正確に捉えることができる。その仕組みを逆手にとって、赤と青のフィルターを通して右目と左目に映る像を一旦分離させ、脳でもう一度合成させる。こうすることで、平面の中に奥行きを感じることができるようになる。これが平面における立体視の仕組みである。
今回「平面における奥行き知覚」のような、そこにないのに感じられる「立体における何らかの新たな知覚」を導き出すため、立体を立体視するというアイデアを思いついた。その新たな知覚を確かめるために立体の立体視、もう少し具体的に言うと、彫刻のアナグリフを作成してみた。
彫刻は回り込んで見ることができる。彫刻は視点によってさまざまに見え方が変化する。彫刻を見ることは、運動すなわち時間を伴う行為である。
はたして、立体の立体視によって4次元のオブジェを見ることができるのだろうか。