ヴィンテージの写真ポストカードに焼き付いた細かな点々が、あるとき星座のように見えた——そんな瞬間から着想を得た本作では、正座する女性のイメージの上にリソインクで夜空のような表現を重ね、さらに修正液で点をなぞることで、恣意的な「星座」が描かれている。かつて日本人の暮らしは地面に近く、多様な座り方が存在していた。しかし明治維新以降、「正しい座り方」として膝を折る様式が“正座”として制度化され、広く定着していくこととなる。この作品は、そのようにして構築された「正しさ」のあり方に問いを投げかけると同時に、時に修正を加えながら受け継がれていく伝統の姿を、一点物のドローイングとして重ね合わせている。