小泉明郎

帝国は今日も歌う

2017 5.3 - 2017 5.11

会場:Vacant 入場料:500円
【訂正とお詫び:pdf】

このたび、無人島プロダクション+小泉明郎スタジオの共同企画として、小泉明郎展「帝国は今日も歌う」を原宿・Vacantで開催します。

本展では、昨年、オランダのデ・ハーレン・ハーレム美術館での小泉個展で発表した新作映像インスタレーション「夢の儀礼─帝国は今日も歌う─」を、日本で初公開します。

この作品は、小泉が幼少期に見た奇妙な夢を出発点に、日常に潜む文化の暴力を扱った作品として昨夏、東京で撮影されました。
出演者が語る小泉の夢の物語と、ナショナリズムに潜在する暴力やヒロイズムへの陶酔が交錯する現実の情景が何層にも重なり合った本作は、夢とも現実ともつかない、虚実入り乱れた異空間に鑑賞者を誘います。

近年、小泉は日本社会における国家主義を主題とした作品を多く制作してきました。
2016年に無人島プロダクションで開催した「空気」展では、天皇を透明な存在としてキャンバスに描くことにより、天皇の身体とその存在を中心に日々繰り広げられる様々な儀礼に意識を向ける作品を発表しました。
今回展示する「夢の儀礼─帝国は今日も歌う─」は、この国家主義のテーマをより小泉本人の個人史に引き寄せた作品です。

「私の父は敬虔なプロテスタントのクリスチャンである。その彼が数年前、私のスタジオに来て、当時制作中だった天皇のコラージュ作品を目にした。次の瞬間、表情が一瞬凍りつき、その日はなんだか歯切れが悪い雰囲気で帰って行った。数日後、彼から電話があり、こう告白された。天皇のコラージュを見た瞬間、自分にとって大切なものが傷つけられた気がした。さらに、天皇に対してそのような感情を持っている自分にショックを受けている、と。終戦時7歳だった彼はぎりぎり軍国教育を受けている。その父は、天皇に対しては否定的な意見を口にして生きてきた。イエス・キリストだけを信じて生きてきた。イエス・キリストを唯一の神として信じて生きてきた。しかし75歳にして、自分の心の奥底に天皇が潜んでいたことに気付かされた。」
(本展に寄せた小泉のステートメントより)

この世界では、ときに「創作(フィクション)が未来を予言」することもあり、「現実が想像を凌駕」することもあります。
社会の空気と同調圧力による息苦しさがますます感じられるこの時代に、この展覧会で何を感じるか。夢の深層をのぞくような幻想的な体験、もしくは内臓の膜をそっと触れられるような感覚を体験することになるかもしれません。
圧倒的な映像美とサウンドによって表現された、社会の「圧」を身体全体で受け止めていただきたいと思います。ぜひ作家が作る空間に足を踏み入れてみてください。

無人島プロダクション+小泉明郎スタジオ

* 作品「夢の儀礼ー帝国は今日も歌うー」の上映時間は約30分です。19時半をすぎてのご入場では作品をすべてご覧いただけない可能性もありますので、お時間に余裕をもってご来場ください。

<関連イベント>

5月4日(木・祝) 15:30 – 17:00(開場 15:00/開演15:30)
原武史(政治学者) × 藤田直哉(SF・文芸批評家) × 小泉明郎

「書かれた天皇、描かれなかった天皇」
数々のエキサイティングな著書によって、天皇のイメージを刷新し続けている天皇研究の第一人者原武史氏と、アートから天皇からゾンビまで軽快に論じる規格外の批評家藤田直哉氏をお招きして、天皇がなぜここまでタブーとなってしまっているのか、その重たく凝り固まった天皇・皇室をめぐる空気をほぐし、天皇を巡って現在何が進行し、そして芸術文化はどのように関われるのか、共に想像力を働かせる場となるでしょう。

5月6日(土) 18:30 – 20:00(開場 18:00/開演18:30)
会田誠(美術家)× 小泉明郎

「混ぜるな危険」!?──美術とタブーの相性診断 
「会田さんは摩擦が必ず生まれることがわかっているのに、なぜタブーに触れ続けるのか」。 小泉曰く「常に正直で、誠実で、変態で、優しい天才アーティスト」会田誠氏をお招きして、戦争、ナショナリズム、天皇など、会田氏が扱ってきたテーマをはじめ、その思考とエネルギーの根源を小泉が会田氏に伺う「ちょっと」真面目なトークです。

参加費:各1,500円(1ドリンク付)

​※上記トークイベント時間中は展示をご覧いただくことができません。5/4は14:30まで入場可/15:00に閉場となり、5/6は17:30まで入場可/18:00に閉場となります。あらかじめ開場時間を確認の上ご来場ください。