CURRENT EXHIBITION

3月27日より無人島プロダクションでは「朝海陽子展 22932」を開催いたします。
昨年朝海は、部屋で映画を見ている人々を撮影した、初のカラー写真シリーズ「sight」で、「第9回フォト・プレミオ 特別賞」「さがみはら写真新人奨励賞」を立て続けに受賞しました。また昨秋には東京都写真美術館で開催された「オン・ユア・ボディ」展に参加するなど、一躍注目を集める存在となった朝海の新シリーズです。
本展タイトルの「22932」とは、ある一軒家のかつての番地です(現在は市の区間整理により表記が変更)。
今回朝海はこの「家」を舞台にモノクロ写真とカラー写真で様々な光景を撮影しました。かつてここに住んでいた住居者が残していった日常生活の痕跡に、自身が選んだモノや人物を加えることで、新たに時間を刻みはじめる「家(場所)の物語」を紡ぎ出しました。
このシリーズは、1枚の写真が次の写真/部屋へとつながるように設定・撮影され、場面転換に関連性をもたせることで、例えば、サスペンスや刑事ドラマに出てくる刑事が、現場に残された証拠品や人間関係によって事件を追っていくような構成で作られています。写真に写し出された様々な物や人物の痕跡をたよりに、一軒の家の中で繰り広げられる『はてしない物語』を観客にひも解いてもらおうとしています。
しかし、場所と出来事の断片にすぎない写真イメージは決して映画のように1つの物語を語ることはなく、それぞれの部屋の時間の前後関係はわかりません。痕跡を追ってみても、終わりもはじまりも設定されていない物語は、ただただ曖昧で、一軒の家の中を視点が移動し続けるだけです。また物語がひとつなのか複数なのかもわかりません。確かなことはある一軒の家の物語であり、記録された写真さえもいずれ消滅する家(場所)の「痕跡」だということだけです。
朝海がこれまで発表してきた、「Trigger」では「海」を、そして「Sight」では「部屋」を撮影し、これらはいずれも定点で観察撮影し、時間の経過を表現してきました。今回は、どんなに綿密に写真で記録しても、一つのフレームにはおさまりきらない空間の広がりと時間軸のパズルを作り上げることによって「新しい物語」を作る、という、朝海の新たな挑戦でもあります。
痕跡が残された証拠品のような写真と、会場で配られる家の見取り図を見て、見知らぬある一軒の家についてのそれぞれの旅物語を紡ぎだしていただければと思います。