「Chim↑Pom通り」 キタコレビルの屋内に建設し、屋外の公道とつなげた「道」。施錠せずに24時間、一般に無料開放することで、プライベートな空間内に公共空間を作り出した。キタコレビルは、二つの家屋を、その間にあった道に屋根を被せることで一つにつながるよう改築された建造物である。詳細は不明だが、築70年ほどの建物には、これまでさまざまな人が入居し、それぞれに増改築を重ねてきたDIY建築の歴史がある。そこで、二つの棟の間にそもそも存在していた道を再生するよう、本作は作られた。私道であるとともに公共空間であるがゆえに、キタコレビル内に存在しつつも道の周りに展示されている作品はパブリック・アート、トイレは公衆便所、バーは路面店などと位置づけられている。  photo: Kenji Morita
「Chim↑Pom通り」 キタコレビルの屋内に建設し、屋外の公道とつなげた「道」。施錠せずに24時間、一般に無料開放することで、プライベートな空間内に公共空間を作り出した。キタコレビルは、二つの家屋を、その間にあった道に屋根を被せることで一つにつながるよう改築された建造物である。詳細は不明だが、築70年ほどの建物には、これまでさまざまな人が入居し、それぞれに増改築を重ねてきたDIY建築の歴史がある。そこで、二つの棟の間にそもそも存在していた道を再生するよう、本作は作られた。私道であるとともに公共空間であるがゆえに、キタコレビル内に存在しつつも道の周りに展示されている作品はパブリック・アート、トイレは公衆便所、バーは路面店などと位置づけられている。  photo: Kenji Morita
「みらいの埋立地」 キタコレビルの敷地内に穴を掘り、「また明日も観てくれるかな?」展で制作した、風俗嬢みらいちゃんのシルエットを描いた作品《みらいを描く》を埋めた。モチーフが「みらい」を名乗る一人の若者であることや、サイアノタイプが劣化の激しい素材であることから、埋葬やタイムカプセル、経年変化などの要素をプロセスとして導入。さらに、その地点をキタコレビルのリノベーションの礎(いしずえ)と定め、その印としてアスファルトに「定礎石」を埋め込んだ。2016年から、みらいを描く→描いたみらいが壊される→壊れたみらいを埋める、という経緯を経た本作は、いつの日か訪れるキタコレビルの解体時に発掘されることで最終形となる。 photo: Kenji Morita
「みらいの埋立地」 キタコレビルの敷地内に穴を掘り、「また明日も観てくれるかな?」展で制作した、風俗嬢みらいちゃんのシルエットを描いた作品《みらいを描く》を埋めた。モチーフが「みらい」を名乗る一人の若者であることや、サイアノタイプが劣化の激しい素材であることから、埋葬やタイムカプセル、経年変化などの要素をプロセスとして導入。さらに、その地点をキタコレビルのリノベーションの礎(いしずえ)と定め、その印としてアスファルトに「定礎石」を埋め込んだ。2016年から、みらいを描く→描いたみらいが壊される→壊れたみらいを埋める、という経緯を経た本作は、いつの日か訪れるキタコレビルの解体時に発掘されることで最終形となる。 photo: Kenji Morita
「PAVILION」 2012年に渋谷パルコで行われた個展のために、パルコの外壁からネオンサイン「PARCOのCとPを取り外し、店内のギャラリーに設置したプロジェクト「PAVILIONのキタコレビルバージョン。閉ざされた空間で、音楽と同期させながらネオンサインを光らせることで、そのスペクタクル性をあらためて強調、頭文字であることからも、いうなれば消費社会で育ったChim↑Pomのセルフポートレートだった。2017年に渋谷パルコのビルが解体されたことで、ネオンサインはビルから再度取り外されて一時保存が決定。スクラップ&ビルドをテーマにした本展のために、パルコから借り受け屋内(道側)にP、外側にCを展示した。《Chim↑Pom通り》がキタコレビルの屋内外に作り出す、公共と私的の曖昧さや断絶についての概念を、Private、Public、Common、Cityなどの頭文字で象徴化する。 photo: Kenji Morita
「PAVILION」 2012年に渋谷パルコで行われた個展のために、パルコの外壁からネオンサイン「PARCOのCとPを取り外し、店内のギャラリーに設置したプロジェクト「PAVILIONのキタコレビルバージョン。閉ざされた空間で、音楽と同期させながらネオンサインを光らせることで、そのスペクタクル性をあらためて強調、頭文字であることからも、いうなれば消費社会で育ったChim↑Pomのセルフポートレートだった。2017年に渋谷パルコのビルが解体されたことで、ネオンサインはビルから再度取り外されて一時保存が決定。スクラップ&ビルドをテーマにした本展のために、パルコから借り受け屋内(道側)にP、外側にCを展示した。《Chim↑Pom通り》がキタコレビルの屋内外に作り出す、公共と私的の曖昧さや断絶についての概念を、Private、Public、Common、Cityなどの頭文字で象徴化する。 photo: Kenji Morita
「SUPER RAT -Scrap & Build-」「また明日も観てくれるかな?」展にて発表され、歌舞伎町商店街振興組合ビルの解体とともに壊された、歌舞伎町のジオラマとスーパーラットのセカンドバージョン。全壊した街並みのジオラマに穴を掘り、その下に土製の台座を制作。そこに巣穴を作りネズミを飼うことで、ネズミによる道と街を台座に形成。展覧会終了後は巣穴に型取り材を流し込み、その街並みを型取りした立体作品を台座として制作。ジオラマ、剥製と組み合わせ、完成形とする。 制作協力:西村健太、楊俊彦 photo: Kenji Morita
「SUPER RAT -Scrap & Build-」「また明日も観てくれるかな?」展にて発表され、歌舞伎町商店街振興組合ビルの解体とともに壊された、歌舞伎町のジオラマとスーパーラットのセカンドバージョン。全壊した街並みのジオラマに穴を掘り、その下に土製の台座を制作。そこに巣穴を作りネズミを飼うことで、ネズミによる道と街を台座に形成。展覧会終了後は巣穴に型取り材を流し込み、その街並みを型取りした立体作品を台座として制作。ジオラマ、剥製と組み合わせ、完成形とする。 制作協力:西村健太、楊俊彦 photo: Kenji Morita
「The Road Show」 《Chim↑Pom通り》の制作のために埋め立てられた廃材のレイヤーを地層として標本化し、キタコレビルの地下に常設展示されている。東京のスクラップ&ビルドの極点であろう、廃棄物や建設残土などからなる埋立地から着想した。渋谷PARCO、歌舞伎町商店街振興組合ビル、キタコレビル、旧国立競技場、「また明日も観てくれるかな?」展の作品など、東京各地で同時期に行われた解体工事の残骸が埋められている。  photo: Kenji Morita
「The Road Show」 《Chim↑Pom通り》の制作のために埋め立てられた廃材のレイヤーを地層として標本化し、キタコレビルの地下に常設展示されている。東京のスクラップ&ビルドの極点であろう、廃棄物や建設残土などからなる埋立地から着想した。渋谷PARCO、歌舞伎町商店街振興組合ビル、キタコレビル、旧国立競技場、「また明日も観てくれるかな?」展の作品など、東京各地で同時期に行われた解体工事の残骸が埋められている。  photo: Kenji Morita
「The Pussy of Tokyo」  《Chim↑Pom通り》の断面標本である土壌モノリスを展示する、地下への通路を塞ぐ蓋。 photo: Kenji Morita
「The Pussy of Tokyo」  《Chim↑Pom通り》の断面標本である土壌モノリスを展示する、地下への通路を塞ぐ蓋。 photo: Kenji Morita
Sukurappu ando Birudoプロジェクト 道が拓ける(Chim↑Pom、周防貴之) (2017)

2016年に歌舞伎町商店街振興組合ビルで開催された個展「また明日も観てくれるかな?」と、2017年に高円寺のキタコレビルで開催された個展「道が拓ける」、ならびにそこで行われたパーティーやイベントからなるプロジェクト。2020年の東京オリンピックを前にして進行する東京の大規模な再開発の最中に行われた前者は、 取り壊し直前の歌舞伎町商店街振興組合ビル全館を使用。展示された作品群は、展示終了後もビルから撤去せず、ビルの解体とともにすべて破壊された。その後、解体されたビルや作品の残骸を拾い集めたChim↑Pomは、自らのスタジオでもあるキタコレビルに持ち込み、それらを素材に常設作品となる《Chim↑Pom通り》《The Road Show》などを制作した。



Statement
「道の開通にあたって」

この度、平成29年度より着手して参りました「道」が、東京・高円寺のキタコレビルに開通する運びとなりました。《Chim↑Pom通り》と命名したその道は、一般開放は24時間、近隣の公道や私道から、誰でも無料でご利用いただけます。
キタコレビルは、推定で築約70年、2棟の建物をつなぎ合わせてひとつとなって以来、霊能者による施設、風俗施設、廃墟、バーコンプレックス、ファッションビルなど、多様な経歴を経ながら、常に入居者たちによる増改築がDIYで進められてきた、見た目はバラックのような建造物です。2014年からはChim↑Pomもスペースを借り、自らのスタジオ、ギャラリー、ショップなどを運営してきました。
Chim↑Pomと建築家、周防貴之[すおうたかし]が共同で「道」を開通する場所は、そもそも2棟だった建物の間の、かつては道が存在していたと思われるところです。そこに再生するかたちで整備されました。が、屋内として使用されてきた長年の歴史もその風景に含まれるため、パッと見では、私的な空間なのか公的な場所なのか曖昧なまま施工されています。
  いうなれば、プライベート空間の中にできた公共空間。そんな道として、今後ともChim↑Pomと不特定多数の皆様とで育てていけたらと思います。
ちなみに、Chim↑Pomは、かねてより公共空間やパブリックアートなどの私的利用を無断で繰り返してきたアーティストコレクティブとして知られており、公共という概念に関しては少なからぬ思いあると自負しております。ですので、いまのところはこの《Chim↑Pom通り》の利用にあたってのルールは設けるつもりありません。が、隣人、キタコレビルのほかの住人、当のChim↑Pomがさすがに必要だろうと判断した場合、随時ルールを設定する予定です。
  自動車が通れる広さはありませんが、混雑時には速度制限を設けるかもしれません。
  火災の危険が感じられた場合、路上喫煙を禁止するかもしれません。
  あまりにセンスのない張り紙や落書きが横行した場合、「張り札」と「器物破損」を禁止するかもしれません。
  パトロールを強化するほど暇ではありませんが、公共を謳う以前に、そもそもここは賃貸物件ですので、大家さんの気持ちを忖度する可能性は十分あります。
また、「道」のオープンに際しまして、展覧会形式のオープニングイベントを催します。
  これは、2016年に新宿の歌舞伎町商店街振興組合ビルで開催されたChim↑Pomの個展「また明日も観てくれるかな?」を前半戦とすると、 その後半戦として開催される、現在の東京で乱発する「スクラップ&ビルド」をテーマにした展覧会です。Chim↑Pomは、この一連の活動を「Sukurappu ando Birudoプロジェクト」と名づけました。
「また明日も観てくれるかな?」展の終了後、ビルから撤去されることなく解体工事とともに半壊、あるいは全壊した作品の残骸が、本展のための新作の素材となり、キタコレビルもDIYな工事によって作品の一部となりました。
  公的な側面と頑丈なコンクリート造りを有していた歌舞伎町商店街振興組合ビルに対し、 180度真逆の側面しかないキタコレビルは、プロジェクトにギャップと矛盾をもたらしつつも、そう遠くない未来にあるだろうビルの解体に向けて、ある意味、プロセスの場としても提案されます。
  そして、いくつかの作品は、この展覧会で最終形として完成されるわけではなく、その時や会期終了を待つことで、完成品として日の目を見ることになる予定です。
  とくに《Chim↑Pom通り》は、このオープニングイベントを機に、それ以降、皆様にどう利用されていくか。それ次第で性格を変化させるでしょう。
皆様のお越しと道のご利用を、心よりお待ちしております。

2017 Chim↑Pom