証言の天使たち (2019)
3面ビデオインスタレーション、証言のアーカイブ資料

99歳になる近藤一さんにご協力頂き制作された作品です。第二次世界大戦時に軍に召集され、中国山西省にて兵士として教育され、その後沖縄にて生死をさまようような戦いを経験した近藤さんは、その自らの実体験を語り広める活動を長年してきました。沖縄戦での壮絶な体験とともに、ほとんどの元兵士たちが語ることの出来なかった、中国での日本軍の残酷な行いの数々を証言してきました。それら証言は、日本兵の残酷さと、戦争の悲惨さを知る上で、非常に貴重な資料となっています。本作品は、近藤さんのインタビュー映像と、すでに出版されている近藤さんの証言をもとに、構成されています。

インタビュー映像では、近藤さんが自らの証言の内容を、断片的に憶えていたり、忘れてしまっている、様子が映し出されています。その上で、涙をながしながら「50年、100年謝っても謝りきれない」と繰り返す様子は、75年経った今でも一人の人間の心を苦しめ続ける、戦争の悲惨さ、そして軍事教育の罪深さを伝える内容になっています。

このインタビュー映像が、若者たちを映した映像とともに展示されます。若者たちの映像では、近藤さんの証言を、真剣なまなざしで一言一句記憶している11人の若者の姿が映し出されています。17歳から26歳までの11人の若者が、必死に近藤さんの言葉を自らの体に取り込み、そしてその言葉を様々な方法で身体化させ、さらに東京の街中に放っていく様子が描かれています。

インスタレーションでは、インタビュー映像(30分、ループ上映)と若者の映像(47分、ループ上映)が並置して投影され、それぞれの上映時間が違うため、二つの映像が常に新たなる組み合わせを生成していきます。この作品は、身体を失い、現実味を失い、忘却の果てへと消えゆく運命にある言葉に、新たなる表象、そして未来へと繋がる身体性をもたらす一つの試みだと思っています。