「堪え難きスーパーラット」2015 何度も展示や雑誌掲載を断念する憂き目に遭ってきた本作。2015年1月のシンガポールでの展覧会では、キュレーターからの出品依頼だったのに、動物を展示する許可が国から下りなかったという経験もある。ちなみに本作をデビュー展で発表したとき、雑誌に載った直後に内容証明が送られてきた。剥製を広報物に使わない、販売しない、など。そのため、例えば作品集や雑誌の表紙などに使った場合、それがメディアに掲載されたときに広報活動と見なされる恐れがあると何度も断念。が、いまでは、《SUPER RAT》はいくつもの海外のアート雑誌で表紙を飾っている。
「堪え難きスーパーラット」2015 何度も展示や雑誌掲載を断念する憂き目に遭ってきた本作。2015年1月のシンガポールでの展覧会では、キュレーターからの出品依頼だったのに、動物を展示する許可が国から下りなかったという経験もある。ちなみに本作をデビュー展で発表したとき、雑誌に載った直後に内容証明が送られてきた。剥製を広報物に使わない、販売しない、など。そのため、例えば作品集や雑誌の表紙などに使った場合、それがメディアに掲載されたときに広報活動と見なされる恐れがあると何度も断念。が、いまでは、《SUPER RAT》はいくつもの海外のアート雑誌で表紙を飾っている。
「堪え難きヒロシマの空をピカッとさせる」2015 広島市現代美術館での個展のために制作した本作が騒動となり、美術館から個展の自粛の要請を受ける。セットで展示する予定で制作中だった千羽鶴をモチーフにしたプロジェクトも、千羽鶴を折ってくれた学校などから素材の提供を拒否され展示を断念。何も展示物がないのにオーディエンスはそれなりにいそう......という超コンセプチュアルな状況も予想したが、それではまったく真意が伝わらないと開催自粛に同意。作品は後に原宿で自主開催した展覧会にて発表し、2013年の旧日本銀行広島支店まで5回の巡回を遂げた。これを期にChim↑Pomは主催者の意図に縛られないインディペンデントな道を常套手段として好むようになる。
「堪え難きヒロシマの空をピカッとさせる」2015 広島市現代美術館での個展のために制作した本作が騒動となり、美術館から個展の自粛の要請を受ける。セットで展示する予定で制作中だった千羽鶴をモチーフにしたプロジェクトも、千羽鶴を折ってくれた学校などから素材の提供を拒否され展示を断念。何も展示物がないのにオーディエンスはそれなりにいそう......という超コンセプチュアルな状況も予想したが、それではまったく真意が伝わらないと開催自粛に同意。作品は後に原宿で自主開催した展覧会にて発表し、2013年の旧日本銀行広島支店まで5回の巡回を遂げた。これを期にChim↑Pomは主催者の意図に縛られないインディペンデントな道を常套手段として好むようになる。
「堪え難きBLACK OF DEATH」2015   ありがたいことに東京都現代美術館が本作を収蔵してくれて、コレクション展にも出展することになった。しかし、コレクションする際と展示する際に打診されたのは、通称ナベツネハウス(読売新聞グループ本社代表取締役・渡邉恒雄氏の自宅マンション)上空にカラスを集めたシーンをカットすること。スタジオジブリ展などで読売系列との関係が深い故かと勘ぐり、最初は拒否してみたが、別に個人攻撃が目的ではないしカットしたからといって作品全体のコンセプトにも影響はない。なにより面倒くさかったので、時期(彼がお亡くなりになったあと)が来たら元に戻すように指示して合意。意図せずして「死」が作品に影響を与えたこのバージョンこそは、まさに「BLACK OF DEATH」。
「堪え難きBLACK OF DEATH」2015   ありがたいことに東京都現代美術館が本作を収蔵してくれて、コレクション展にも出展することになった。しかし、コレクションする際と展示する際に打診されたのは、通称ナベツネハウス(読売新聞グループ本社代表取締役・渡邉恒雄氏の自宅マンション)上空にカラスを集めたシーンをカットすること。スタジオジブリ展などで読売系列との関係が深い故かと勘ぐり、最初は拒否してみたが、別に個人攻撃が目的ではないしカットしたからといって作品全体のコンセプトにも影響はない。なにより面倒くさかったので、時期(彼がお亡くなりになったあと)が来たら元に戻すように指示して合意。意図せずして「死」が作品に影響を与えたこのバージョンこそは、まさに「BLACK OF DEATH」。
「堪え難きREAL TIMES」2015 2012年の上海ビエンナーレの際、キュレーターから《REAL TIMES》の展示をリクエストされたが、直前になって展示作品の変更を要請される。当時激化していた尖閣諸島問題が原因だった。メンバーが原発の近くで旗に改変していくマークをスプレーで描くのだが、いちど日の丸になっているのが問題とのこと。日本Disと受け取られがちな本作にしてはめずらしいタイプのクレームだった。ビエンナーレ直前にも上海で大規模な反日デモが起き、日本人観光客も激減していたときだった。つまり、確かに危ない時期ではあった。ちなみに本作品は、赤い旗にプロジェクションをして、日の丸の赤を相殺するバージョンである。
「堪え難きREAL TIMES」2015 2012年の上海ビエンナーレの際、キュレーターから《REAL TIMES》の展示をリクエストされたが、直前になって展示作品の変更を要請される。当時激化していた尖閣諸島問題が原因だった。メンバーが原発の近くで旗に改変していくマークをスプレーで描くのだが、いちど日の丸になっているのが問題とのこと。日本Disと受け取られがちな本作にしてはめずらしいタイプのクレームだった。ビエンナーレ直前にも上海で大規模な反日デモが起き、日本人観光客も激減していたときだった。つまり、確かに危ない時期ではあった。ちなみに本作品は、赤い旗にプロジェクションをして、日の丸の赤を相殺するバージョンである。
「堪え難き気合い100連発」2015 これまで20カ国ほどで展示されてきた本作であるが、ある国でのビエンナーレへの出品をキュレーターに打診された際、主催者の国際交流基金からNGが出た。スタッフからオフレコで理由を聞いたのにばらしてしまって申し訳ないが、「安倍政権になってから、海外での事業へのチェックが厳しくなっている。書類としての通達はないが、最近は放射能、福島、慰安婦、朝鮮などのNGワードがあり、それに背くと首相に近い部署から直接クレームが来る」という。結局は別の作品を出品することで合意した。本作品は、その提案に則ったバージョン。「いまは我慢するしかない」とのスタッフの悔しそうな言葉に、戦前かのような響きを感じた。
「堪え難き気合い100連発」2015 これまで20カ国ほどで展示されてきた本作であるが、ある国でのビエンナーレへの出品をキュレーターに打診された際、主催者の国際交流基金からNGが出た。スタッフからオフレコで理由を聞いたのにばらしてしまって申し訳ないが、「安倍政権になってから、海外での事業へのチェックが厳しくなっている。書類としての通達はないが、最近は放射能、福島、慰安婦、朝鮮などのNGワードがあり、それに背くと首相に近い部署から直接クレームが来る」という。結局は別の作品を出品することで合意した。本作品は、その提案に則ったバージョン。「いまは我慢するしかない」とのスタッフの悔しそうな言葉に、戦前かのような響きを感じた。
堪え難きを堪え↑忍び難きを忍ぶ (2015)

Garter Galleryにて開催された、Chim↑Pom結成10周年記念展。2011年あたりから激化した公的機関による検閲、展覧会主催者やキュレーターからの自粛の要請、そしてアーティスト自身による自主規制などをテーマとしつつ、10年間の活動のなかで妥協し受け入れてきた五つのケースを、リークするかたちで公開。規制の注文によって改変した作品群を、第二次世界大戦の敗戦を悔しさとともに告げた昭和天皇の玉音放送の一節「堪え難きを堪え、忍び難きを忍び」を引用しつつ、自らの黒歴史として回顧した。

Statement

10周年を迎えるにあたり。
アートをマジでガチでやってきた最高の日々だったが、同様にまじで美術館や機関の検閲にクソみたいに屈し続けて来た最低の10年でもあった。
近年こういった問題が多く表に出回る様になったが、とはいえアーティストとキュレーターの個人的な資質に問題がシフトしたり、美術館が批判しやすい権力として単純化されてワイドショー的に盛り上がるなど、つまりは問題になった各々の作品が言及していたはずのバラエティーにとんだ社会的なイシューがフォーカスされることなく、20世紀的「表現の自由」をめぐるクソみたいな議論に終始しているように思う。
問題は、今突然おこった訳ではなく、これまでも実は人知れず繰り返されて来たクソみたいに理不尽な、しかし常識的だと水面下で交わされ続けて来たクソみたいな検閲と交渉の慣例にこそあり、その責任は、要求を伝えざるをえないクソみたいな事情を抱えている主催者だけでなく、「表現の自由」を表で謳いながらも、それらを受け入れ続けて来た全てのクソみたいなアーティストにもあったはず。
たしかにアートに関わるキュレーターや主催者は良い人ばっかだから、彼らとそんな低レベルな交渉するのはマジでクソみたいにめんどくさい。気まずい会議が長くなって、シリアスなうざい空気を吸ってお互いに寿命を縮めるくらいなら、代替案を考えますと外のフレッシュな空気に逃げた方がまだマシだった。
10周年を迎えるにあたり、そうやって積み重ねて来た自らの黒歴史を振り返り、Chim↑Pomは、改めてアートに本当に申し訳ないことをしたと思っている。そして結成以来ずっと向き合ってきたクソみたいな空気、更には現政権になって以来実際に、そしてとても具体的に厳しくなってきたアートへの介入、それと裏腹で進むクソみたいな戦後70年を前にして、堪え難きを耐え、忍び難きをを忍び、そんなクソみたいな黒歴史を10周年の記念として回顧したいと思う。
ちなみに本展で展示される5つのケースはChim↑Pomとしても氷山の一角であり、日本のアートシーン全体で言うと、この展覧会を広げていった先には途方も無く巨大な日本美術の回顧展が待ち受けるだろう。
僕らを支えて来てくれた日本のアートシーン、これまで本当にありがとう。そしてこれを機に前進できない組織とは、これでさようなら。

Chim↑Pom
2015年8月7日